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「ヘルシンキ3部作」第3作。"人生、捨てたもんじゃない"と思わせてくれる。
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街のあかり [DVD]」マリア・ヤルヴェンヘルミ/ヤンネ・フーティアイネン
街のあかり2.jpg ヘルシンキの百貨店で夜間警備員を務める冴えない男コイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)は、魅力的な女性ミルヤ(マリア・ヤルヴェンヘルミ)と出会う。2人はデートをし、コイスティネンは恋に落ちた。人生に光が射したと思った彼は、起業のため銀行の融資を受けようとするが、まったく相手にされなかった。それでも恋している彼は幸せだった。街のあかり1.jpgしかし、実は恋人は彼を騙していた。ミルヤは、宝石強盗を目論むリンドストロン(イルッカ・コイヴラ)の手先だった。まんまと利用されたコイスティネンだったが、惚れたミルヤを庇って服役する。リンドストロンはそこまで読んで、孤独な彼を狙ったの街のあかり4.jpgだ。馴染みのソーセージ売りアイラ(マリア・ヘイスカネン)の彼への思いには気づかぬまま、粛々と刑期を終え社会復帰を目指すコイスティネン。だがある日、リンドストロンと一緒のミルヤと居合わせた彼は、そこで初めて自分が利用されていたに過ぎないことを悟る―。

街のあかり5.jpg 2006年公開の、アキ・カウリスマキ監督の、「浮き雲」('96年)、「過去のない男」('02年)に続く「ヘルシンキ3部作」(または「敗者3部作」)の第3作(完編)で、'06年カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作。

 この作品の主人公の男は"孤独"の中にいて、彼の身に起こる不幸はとても辛いものだけれど、彼自身は自分の不幸に気づいてない様子でもあります。さらには、幸せの芽がすぐ傍にあることをも―(やや"無力症"気味?)。そんな彼が起業を思い立ったのはいいですが、職業訓練校の終了証明だけを持って銀行に行き、それだけでもって融資を受けようとするのが滑稽(この辺り、カウリスマキ独特のユーモアか)。それでも、切ない出来事のあとにジンワリ心に広がる希望があって、誰かがこの映画についてそう言ってたけれど、"人生、捨てたもんじゃない"と思わせてくれる、やさしさで包み込むような物語が心地いいです。

街のあかり31.jpg コイスティネンを演じるヤンネ・フーティアイネンは、アキ・カウリスマキ作品では前作「過去のない男」などに脇役出演し、今回がカウリスマキ作品で初めての主演。恋人のいない寂しい男を演じるにはマルチェロ・マストロヤンニに似ていて男前過ぎる気もしましたが、その分、寂しそうな姿は絵になっていました(職場でも孤立し、男たちは彼のことを蔑んでいるのに、女性たちは同情的であるのはこのイケメンのせい?)。一方、アキ・カウリスマキ作品主役級常連のカティ・オウティネンは、スーパーのレジ係の役でカメオ出演していました。

街のあかり7.jpg「街のあかり」●原題:LAITAKAUPUNGIN VALOT(英:LIGHTS IN THE DUSK)●制作年:2006年●制作国:フィンランド・フランス・ドイツ●監督・脚本・製作・撮影:アキ・カウリスマキ●時間:78分●出演:ヤンネ・フーティアイネン/マリア・ヤルヴェンヘルミ/イルッ街のあかりcb.jpgカ・コイヴラ/マリア・ヘイスカネン/ヨーナス・タポラ/ペルッティ・スヴェホルム/メルローズ(バンド)/カティ・オウティネン(カメオ出演)/パユ(犬)●日本公開:2007/07●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-05-12)((評価:★★★☆)

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「敗者3部作」第2作。貧しい暮らしをしている人々の方が不遇の男に親切。

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過去のない男 [DVD]」カティ・オウティネン/マルック・ペルトラ
過去のない男1.jpg フィンランドのヘルシンキに向かう列車の乗客の中にその男(マルック・ペルトラ)はいた。辿り着いた夜の公園で彼は一眠りしていたが、そこに現れた3人組の暴漢に身ぐるみ剥がれた上にバットで執拗に殴打され、半死半生の身で病院に搬送された。一時は死んだと診断された男だったが奇跡的に蘇生した。その後、港の岸辺で再び昏倒していた男を救ったのは、コンテナに住むニーミネン(ユハニ・ニユミラ)一家であった。徐々に回復していった彼であったが、一家の妻カイザ(カイヤ・パリカネン)過去のない男2.jpgに何者か問われたときに、答えられなかった。彼は、頭を殴られたことにより、それまでの記憶、それまでの自分を失ってしまっていたのだ。そんな「過去を失った男」である彼に港町の人々は快く手を貸してくれる。コンテナ一家の主人は金曜日にスープを配給する救世軍の元に男を連れて過去のない男3.jpg行き、「人生は後ろには進まない」と励ます。地元の悪徳警官アンティラ(サカリ・クオスマネン)は彼に空きコンテナを貸し与え、男はその前にじゃがいも畑を作り、拾ったジュークボックスを置いた。職安では身分がないという理由で門前払いされたが、救世軍の事務所で仕事を得ることが出来た。そして、そこに属する下士官の女性イルマ(カティ・オウティネン)と仲を深めながら、男は徐々に人間としての生活を取り戻していく―。

過去のない男4.jpg アキ・カウリスマキ監督の2002年公開作。「浮き雲」('96年)に続く「敗者3部作」の第2作。'02年・第55回「カンヌ国際映画祭」で「グランプリ」と、救世軍の女性イルマを演じたカティ・オウティネンが「女優賞」を受賞しています(カンヌは格差社会を描いたものがよく賞を獲る)。

過去のない男5.jpg コンテナで暮らすような貧しい暮らしをしている人々の方が役人などより、不遇の男に対してよほど親切だったなあ。そんな貧しい人が「ディナーに行く」といっておめかししているので、どんなレストランに行くのかと思ったら...(笑)。救世軍が貧しい人々のスープを配るというのは、現代でも同じなのか。神田神保町に日本本営があるけれど...。それにしても、救世軍の弁護士って年寄りだったけれど有能だったなあ。拘留された男の許にその弁護士を遣わして彼の身柄を救ったのもイルマだったという、この辺りは分かりやすかったです。

 「植物人間になるくらいなら死なせてやろう」って医者が口に出して言うのが、あちらの国らしいと思いました。

過去のない男6.jpg この年の「パルム・ドール」はロマン・ポランスキー監督の「戦場のピアニスト」でしたが、優秀な演技を披露した犬に贈られる「パルム・ドッグ賞」を、犬のタハティ(役名:ハンニバル)が受賞しています(同監督作品は必ず犬が登場し、何度かこの賞にノミネートされている。「ルアーヴルの靴みがき」('11年)では、「パルム・ドッグ賞」の「審査員特別賞」を受賞)。フィンランドのムード歌謡=イスケルマの曲の数々とともに(同時監督の作品にはしばしば地元のバンドやミュージシャンが出てくる)、アキ・カウリスマキ監督がファンだと公言する日本のクレイジーケンバンドの「ハワイの夜」が挿入歌として流されています(もともとカウリスマキ・ファンである小野瀬雅生が、自分たちのCDが出るたびに欠かさずカウリスマキ監督に送っていて、その彼らのサウンドが監督に気に入られたという経緯がある)。

過去のない男 サカリ・クオスマネン.jpgカティ オウティネン .jpg 因みに、救世軍の女性を演じて「カンヌ国際映画祭女優賞」を受賞したカティ・オウティネンは「パラダイスの夕暮れ」('86年)、「マッチ工場の少女」('90年)、「浮き雲」('96年)、この後の「ルアーヴルの靴みがき」('11年)などにも出演し、悪徳警官を演じたサカリ・クオスマネンも「浮き雲」でレストランのドアマン、「希望のかなた」('17年)でレストラン店主役など出ていて(こちらはどちらとも"いい人"の役)、2人とも同監督作品の常連です。この監督、常連の俳優か、そうでなければ素人に近い人を使う傾向があるのではないでしょうか。おそらく、中途半端に演技されるのが嫌なんだろうなあ。

過去のない男7.jpg「過去のない男」●原題:MIES VAILLA MENNEISYYTTA(仏:L'HOMME SANS PASSE、英:THE MAN WITHOUT A PAST)●制作年:2002年●制作国:フィンランド・ドイツ・フランス●監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ●撮影:ティモ・サルミネン●音楽:レーヴィ・マデトーヤ●時間:97分●出演:カティ・オウティネン/マルック・ペルトラ/アンニッキ・タハティ/マルコ・ハーヴィスト&ポウタハウカ(救世軍バンド)/ユハニ・ニユミラ/カイヤ・パリカネン/エリナ・サロ/サカリ・クオスマネン/アンネリ・サウリ/オウティ・マエンパー/ペルッティ・スヴェホルム/タハティ(犬のハンニバル)●日本公開:2003/03●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-04-29)((評価:★★★★)

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「フィンランド3部作」第1作。会話がすべてではないところに夫婦のリアルを感じ、一方で、寓話的でもあった。
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【映画チラシ】浮き雲 アキ・カウリスマキ カティ・オウティネン」 カリ・ヴァーナネン
カティ・オウティネン/サカリ・クオスマネン
浮き雲01.jpg浮き雲012」.jpg 伝統的スタイルのレストラン"ドゥブロヴニク"で給仕長を務めるイロナ(カティ・オウティネン)は、市電の運転士である夫ラウリ(カリ・ヴァーナネン)とつましく幸せに暮らしていた。しかし不況の影響でラウリは整理解雇、"ドゥブロヴニク"も大手チェーンに買収されイロナたち従業員は失職してしまう。働き盛りを過ぎた中年の夫婦は職探しに苦労する。イロナは場末の安食堂のコック兼給仕の仕事に就くが、税務調査のゴタゴタで給料がうやむやに。妻の給料を食堂経営者に請求しに行ったラウリは浮き雲02.jpg、袋叩きにされ港に放り出される。安宿でしばらく静養したラウリが帰宅すると、家財は差し押さえられており、イロナはラウリの妹のもとに身を寄せていた。イロナの元同僚で"ドゥブロヴニク"のドアマンだったメラルティン(サカリ・クオスマネン)の紹介で仕事にありついたラウリは、彼にレストランの開業を提案される。夫婦は決意して事業計画を立てるが、資金を借してくれる銀行がない。ラウリはクルマを売った金をカジノで増やそうとするが浮き雲03.jpg、全額スッてしまう。途方に暮れるイロナだったが、求職に訪れた美容院で偶然、"ドゥブロヴニク"の元経営者スヨホルム夫人(エリナ・サロ)と再会する。引退して生きがいを失っていた夫人は、イロナの計画を聞いて出資を申し出る。ラウリとメラルティンは、"ドゥブロヴニク"の元シェフでアルコール依存症のラユネン(マルク・ペルトラ)を探し出し、治療施設に送り込んで更生させる。"ドゥブロヴニク"の元従業員たちが揃い、イロナとラウリのレストラン"ワーク"が開店した。ランチタイムになっても客が入らず不安になるが―。

 1996年公開の、アキ・カウリスマキ監督の「フィンランド3部作」(社会の底辺で生きる「敗者」たちの姿を独特のユーモアと哀愁を交えて描いた作品群で、「敗者3部作」とも呼ばれている)の第1作。

 妻が勤めるのはなかなかいい感じのレストランでしたが、いきなりリストラをし、加えて夫も失業。失業補償なんていらない!と、夫は積極的に運転関連の職を探し、長距離バス運転士に内定するが健康診断で不適とされ運転資格まで失い、妻はレストランを回るも、「38歳は高年齢」と前職経験も評価されない―というように失業による不幸が怒涛のように主人公の夫婦を襲ってきますが、それでいてこの夫婦、どこかユーモラスで間の抜けたところがあり、クスリと笑ってしまう場面もあるのはこの監督ならではでしょうか。

こんな映画が、.jpg この作品、漫画家の吉野朔美(1950-2016/57歳没)の『こんな映画が、―吉野朔実のシネマガイド』('01年/PARCO)にも取り上げれていましたが、吉野朔美氏は、この監督は「間」を作るのが上手い人で、「......」の部分ばかりで出来上がっていてセリフが極めて少ないのが特徴であると。ナルホド(そう言えば、「孤高のグルメ」の俳優・松重豊がアキ・カウリスマキ監督の作品が大好きだという)。

 妻の給料がうやむやになったことに怒り、食堂経営者の所に行き、逆にぼこぼこににされて血だらけの顔を妻にみせられず何日も家に帰らない夫。帰ってこないことに怒った妻は家を出ていってしまいます。事情を説明してもなかなか許さない妻。でも、一緒に家に帰ったということは、許したということでしょう(吉野朔美氏によれば、妻は夫が帰らなかったことは許していないが、夫の怒りには感謝しているのだと)。会話がすべてではないところに夫婦のリアルを感じます。

浮き雲04.jpg 一方で、元経営者に偶然出会い、彼女が引退して生きがいを失い、金の使い道を持て余していた(いつの間に蓄財した? 店を売却した金か)というのはややご都合主義とみる向きもあるかもしれません。この部分は寓話的と言うか、大人のメルヘンのようにも感じました。監督インタビューによると、結末はハッピーエンドにするしかなかったが、本当は結末をもっと非情なものにしたいと思っていたので、自身でも納得がいかないという気持ちもあったとのことです(これに対し、前作「マッチ工場の少女」('90年)は悲劇的、非情な終り方で突っ切ったと言える)。

浮き雲05.jpg ラスㇳ、店を開店しランチタイムになっても客が入らず不安がる夫婦ですが、しばらくすると1人入り2人入り、やがて満員となった上、ディナーの団体予約まで入る―。喜びを噛みしめて店の前で一服し、空を見上げる夫婦の表情がいいです。吉野朔美氏は、「見終わった時、少し上向きな気分になっている気持ちの良い映画です。こうゆうのは作ろうと思ってもなかなかできない」と。何気ない小さなエピソードの積み重ねなのだなあ。吉野朔美はこの監督の上手さをよく見ていたと改めて思いました。偶然も重要だが、その機会を掴める心構え・準備が必要であるということ。『その幸運は偶然ではないんです!』のJ・D・クランボルツの「プランドハプンスタンス理論」を想起させる作品でもありました。

愛しのタチアナ浮き雲 HD.jpg真夜中の虹 浮き雲dvd.jpg「浮き雲」●原題:KAUAS PILVET KARKAAVAT(英語:DRIFTING CLOUDS)●制作年:1996年●制作国:フィンランド●監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ●撮影・音楽:ティモ・サルミネン●時間:98分●出演:カティ・オウティネン/カリ・ヴァーナネン/エリナ・サロ/サカリ・クオスマネン/マルク・ペルトラ/マッティ・オンニスマー/ピエタリ(犬)●日本公開:1997/07●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-12-07)(評価:★★★★)

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《読書MEMO》
■監督のインタビューからの抜粋
「わたしが「浮き雲」を作ろうとしていたとき、フィンランドでは失業率が22%にも達し、友人たちも破産の憂き目にあっていました。それほどたくさんの人たちが仕事を失い、 国中が絶望に覆われている状況のなかで、わたしはこの問題を見つめる映画を作りたいと思ったのです。結末については、ハッピーエンドにするしかありませんでした。 これはわたしが作った唯一のソーシャル・セラピー的な映画です。ただ本当は結末をもっと非情なものにしたいと思っていたので、納得がいかないという気持ちもありますが...」

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「労働者3部作」第3作。希望の無い終わり方だが、個人的にはこれはこれで良かった。

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「マッチ工場の少女」カティ・オウティネン
マッチ工場の少女01.jpg イリス(カティ・オウティネン)は母(エリナ・サロ)と継父(エスコ・ニッカリ)と暮らす冴えない独身女性。マッチ工場に勤めるが、両親は彼女の収入をあてにして働かず、家事までさせる始末。質素な身なりゆえか男性との出会いもなく、味気ない日マッチ工場の少女04.jpg々を送るイリス。ある給料日、イリスはショーウィマッチ工場の少女034.jpgンドーで見かけた派手なドレスを衝動買いする。両親に咎められ返品を命じられるが、かまわずドレスを着てディスコに行くと、アールネ(ヴェサ・ヴィエリッコ)という男に声をかけられる。一流企業に勤める彼の豪華なアパートで一夜を共にする二人。アールネに惚れ、さらなるデートを取り付けようとするイリス。自宅へ招き両親にまで会わせるが、あの夜のことは遊びだったとアールネは告げる。後日、妊娠していたことをマッチ工場の少女03.png知ったイリスは、一緒に子供を育てるようアールネに手紙を書く。しかし返事は小切手と、中絶を求める短い言葉だけ。放心して町へ彷徨い出たイリスは、クルマに撥ねられ流産する。さらに追い打ちをかけるように、母に心労をかけたとマッチ工場の少女058.jpgして継父から勘当される。兄(シル・セッパラ)のアパートに転がり込み、悲嘆に暮れるイリス。やがて意を決した彼女は、薬局で殺鼠剤を購入し、水に溶かして「毒」を作りボトルに入れてハンドバッグにしまう。アールネのアパートを訪ねると女が出てくる。入れ違うように中に入り、「お酒」と言うとアールネが二人分持ってくる。「氷も」と言い、アールネが取りに行っている間、彼のグラスに毒を注ぐ。「お別れに来マッチ工場の少女054.jpgたの。もうご心配要らないわ」小切手を返しマッチ工場の少女06.jpgイリスは去る。安心したアールネは酒を飲み干す。帰りにイリスがバーに寄りビールを飲みながら本を読んでいると、酔った男がナンパしてくる。イリスは微笑みかけ、彼のグラスに毒を注ぐ。翌日、イリスは実家に行き、母と継父に食事を用意する。ウォッカのボトルに残りの毒を全部入れ、自分は隣の部屋で一服しながら音楽を聴く。両親が死んだのを確認して家を出る。翌日工場で働いていると、二人の刑事がやってくる―。

 1990年公開のアキ・カウリスマキ監督の、「労働者(プロレタリアート)3部作」の「パラダイスの夕暮れ」('86年)、「真夜中の虹」('88年)に続く第3作。ベルリン国際映画祭「インターフィルム賞」受賞作。

マッチ工場の少女05.jpg 主演は「パラダイスの夕暮れ」に続いてカティ・オウティネン。ただし、「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」のような主人公たちの先行マッチ工場の少女02.pngきに希望を持たせるような話でもなく、むしろ、主人公のイリスがシリアルキラーみたになってしまうため(4人殺害した?)、後味の悪い作品と言えるかもしれません。こうした救いに無い終わり方をする作品は、カウリスマキ監督作では珍しいと言えます。したがって一般にはウケないかもしれませんが、個人的には、こうしたハッピーエンドではない作品も好きです。

 カウリスマキ監督が敬愛する小津安二郎の作品で言えば、主人公が終盤一気に自滅の道へ突き進んで行く「東京暮色」('57年)みたいな位置づけになるでしょうか。(「東京暮色」は1957年度「キネマ旬報ベストテン」で第19位と低位だったが、笠智衆によれば、小津安二郎自身がそのことを自虐を込めて語っていたようだ)。

 ハッピーエンドしか撮らない監督というのもまた面白味がないし、この作品の場合、確かに後味はよくないですが、主人公の内面では行為が完結したものとなっており(落とし前をつけた形で終わる)、しっかりとした芯が感じられる作品でした(ハッピーエンドとは別の意味でのカタルシスがある)。イリスの逮捕で映画は終わりますが、それがイリスにとっては納得済みで、むしろ的な終幕だったと言えます(因みに、フィンランドには死刑制度は無い)。

マッチ工場の少女061.jpg 主人公が唯一の理解者であると思われる兄の家に駆け込むと、室内にジュークボックスやビリヤード台がある洒落た感じの佇まいで、彼は意外と器用に生きているのかも(このシル・セッパラ演じる兄のキャラクターは、アキ・カウリスマキの兄ミカ・カウリスマキ監督、シル・セッパラ主演の「ゾンビ・アンド・ザ・ゴースト・トレイン」('91年/フィンランド)という作品に引き継がれているようだ)。家族の中で彼女だけが割食っている感じで、男女格差というのもモチーフとしてあるように思われます。簡単に女を捨てる男、娘に生活の糧をアテにする義父―こうした輩への批判が込められているのは勿論で、その意味では、フェニミズム映画とも言えるかと思います。

マッチ工場の少女v.jpgマッチ工場の少女p.jpg「マッチ工場の少女」●原題:TULITIKKUTEHTAAN TYTTO(英: THE MATCH FACTORY GIRL)●制作年:1990年●制作国:フィンランド●監督・脚本:アキ・カウリスマキ●製作:アキ・カウリスマキ/クラス・オロフソン/カティンカ・ファラーゴ●撮影:ティモ・サルミネン●時間:69分●出演:カティ・オウティネン/ヴェサ・ヴィエリッコ/エリナ・サロ/エスコ・ニッカリ/シル・セッパラ●日本公開:1991/03●配給:シネセゾン●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-11-23)((評価:★★★★)
 
   
  
 
マッチ工場の少女 [VHS]
 

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「労働者3部作」第1作。カウリスマキ映画の作風の雛形が出来上がった作品。

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パラダイスの夕暮れ (字幕版)」[Prime Video]マッティ・ペロンパー/カティ・オウティネン

パラダイスの夕暮れ103.jpg ニカンデル(マッティ・ペロンパー)はゴミの収集人。相棒と二人、収集車に乗ってゴミを集めて回る。仕事帰りにスーパーで買い物をしていると手首から血が出ていた。レジ係の女性イロナ(カティ・オウティネン)が親切に手当してくれた。ニカンデルは彼女に一目惚れする。年配の同僚(エスコ・ニッカリ)から「俺は独立してのし上がるつもりだ。一緒にやろう。」と誘われ、その気になったが、同僚は仕事中に急死してしまう。ショックを受けたニカンデルはバーで酔って暴れ、留置所に入れられた。そこで出会ったメラルティン(サカリ・クオスマネン)という失業中の男に自分の会社を紹介し、一緒に働くことになる。仕事中にパラダイスの夕暮れ104.jpg偶然イロパラダイスの夕暮れ105.jpgナに再会し、デートに誘う。ビンゴホールに連れて行ったら「わたしたちうまくいかない」と振られてしまう。イロナはスーパーの店長(ペッカ・ライホ)からクビを言い渡される。悔しくて事務所の手提げ金庫を盗んだ。帰り道、ニカンデルを見つけドライブをねだった。二人は郊外のホテルに泊まりゆっパラダイスの夕暮れ106.jpgくり話をした。翌朝、海を見ながら初めてキスをした。イロナがアパートに帰ると刑事が待っていた。彼女が取り調べを受けている間、ニカンデルはこっそりと金庫をスーパーの事務所に戻す。ニカンデルがイロナのアパートに行くとルームメイト(キッリ・ケンゲス)しかいなかった。彼女は荷物を纏めて出て行ったらしい。ニカンデルは車で探し回ったが見つからない。イロナはホテルが満室だったのでベンチで夜を明かし、朝になってニカンデルの部屋のベルを鳴らした。ニカンデルはコーヒーを出した。彼が仕事をしている間、イロナは彼のベッドで眠った。同棲が始まり、イロナは衣料品店で働き出したが、二人の心はすれ違う。夕食後、イロナが「散歩に行きたい」と言うのでニカンデルが「一緒に行こう」と言うと「独りがいいの」パラダイスの夕暮れ107.jpgと答える。メラルティン夫婦と一緒に4人で映画を観て、酒を飲もうと約束をしたのにイロナはすっぽかす。寂しく情けない思いをしたニカンデルはヘソをまげ、彼女をアパートから追い出す。レコードを聴いたり、パブで酒を飲んで自分を慰めたが、どうしても彼女に会いたかった。イロナは勤め先の店長(ユッカ=ペッカ・パロ)と高級レストランで食事をしていたが、気分が乗らず「帰るわ。ご馳走さま」と中座し、ニカンデルの部屋へ行き、留守だったが彼のレコードを聴きながら寝入ってしまった。その頃ニカンデルはパブの帰り道、暴漢におそわれてケガをして倒れていた。翌日、搬送された病院にメラルティンが見舞いに来た。やっぱりイロナに会いたい。病院を抜け出して彼女の店に行った。「迎えに来た。新婚旅行に行こう」「いいわね」二人をメラルティンは港まで送った―。

パラダイスの夕暮れ109.jpg 1986年公開の、アキ・カウリスマキ監督の、長編3作目で、「労働者(プロレタリアート)3部作」第1作。今に見られるカウリスマキ映画の独特の作風の雛形が出来上がった作品とされ、さらに、既にそれは完成形と言えるものになっています。また、アキ・カウリスマキ監督作の常連となるマッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンの初共演作でもあります(ただし、マッティ・ペロンパーの方は、アキ・カウリスマキ監督と親交のあるジム・ジャームッシュ監督のオムニバス映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」('91年/米)のヘルシンキ編にも出たりしていたが、残念ながら44歳で早逝した)。

マッティ・ペロンパー(1951-1995/44歳没)
 
 「労働者3部作」の第1作の主人公がゴミの収集人というのも象徴的です。因みに、労働者3部作のあとの2作(「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」)はそれぞれ失業者、女工を主人公にしています。徹底して社会の片隅に生きる人々(少し貧しいが、心は優しい)を主人公にし続けているとこころが、ある意味凄いと思います(小津安二郎などの影響も受けているようだが、小津は途中から中流以上の家庭を舞台にするようになった)。

 この作品を観て、経済的に裕福ではない人を主人公に据えるとともに、彼らは、現状では幸福感が得られていないと言うか、幸福とは何か、自分が不幸だということにも気づかないでいるような状況で登場するのも特徴であると改めていました。イロナに「なぜ私といるの?」と訊かれたニカンデルが、「俺には理由なんてない。あるのはただ、この名前と、ゴミ集めの制服、虫歯に病気の肝臓、慢性胃炎...いちいち理由をつける贅沢なんて俺にはない」と、ちょっとハードボイルドっぽく返しますが(この男、時々ハードボイルドを気取るところもある)、自虐的と言うか達観してしまっている印象も受けます。二人は急接近したと思ったら離反したりしますが、最後はハッピーエンドに。でも、この先この二人、大丈夫かなという気もします(結構、発作的に行動する傾向が二人ともある)。

 ニカンデルの友人となるメラルティンを演じたサカリ・クオスマネンがいい味出していて、演じているメラルティンというのも実はいい男でした。ラスト、2人がソ連船でエストニアのタリンに新婚旅行で旅立つときに見送る姿が何とも言えませんでした(因みに、カウリスマキ監督は、旅立つ二人を映さず、見送る友人だけを撮っている)。この人もアキ・カウリスマキ監督作の常連で、「過去のない男」('02年)では悪徳警官を演じていました。強面の悪(ワル)の方が風貌的に似合うため、この映画での意外性が効いています。

 ビンゴホールというのがあるんだね。まあ、フツー、デートするような場所ではないけれど(笑)。カウリスマキ監督自身もホテルのフロント係として出演しています。フィンランドの地元のムード歌謡曲などが使われているのも、カウリスマキ監督作の特徴。あと無いのは、「犬」の演技だけでしょうか。

パラダイスの夕暮れ f.jpgパラダイスの夕暮れ108.jpg「パラダイスの夕暮れ」●原題:VARJOJA PARATIISISSA(英: SHADOWS IN PARADAISE)●制作年:1986年●制作国:フィンランド●監督・脚本:アキ・カウリスマキ●製作:ミカ・カウリスマキ●撮影:ティモ・サルミネン●時間:78分●出演:マッティ・ペロンパー/カティ・オウティネン/サカリ・クオスマネン/エスコ・ニッカリ/キッリ・ケンゲス/ペッカ・ライホ/ユッカ=ペッカ・パロ/ヴァンテ・コルキアコスキ/マリ・ランタシラ/ アキ・カウリスマキ(カメオ出演)●日本公開:2000/04●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-10-10)(評価:★★★☆)

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「難民3部作」第2作。前作よりシビアな結末だが、「カーリドは死ななかった」とみる。

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希望のかなた [DVD]」サカリ・クオスマネン
『希望のかなた』1.jpg ヘルシンキ。トルコからやってきた貨物船に身を隠していたカーリド(シェルワン・ハジ)は、この街に降り立ち難民申請をする。彼はシリアの故郷アレッポで家族を失い、たったひとり生き残った妹ミリアム(ニロズ・ハジ)と生き別れになっていたのだ。彼女をフィンランドに呼び、慎ましいながら幸福な暮らしを送らせることがカーリドの願いだった。一方、この街でセールスマン稼業と酒浸りの妻に嫌気がさしていた男ヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)は遂に家出し、全てを売り払った金をギャンブルにつぎ込んで運良く大金を手にした。彼はその金で一軒のレストランを買い、新しい人生の糧としようとする。店と一緒についてきた従業員たちは無愛想でやる気の『希望のかなた』2.jpgない連中だったが、ヴィクストロムにはそれなりにいい職場を築けるように思えた。その頃カーリドは、申請空しく入国管理局から強制送還されそうになり、逃走を目論んだあげく出くわしたネオナチの男たちに襲われるが、偶然ヴィクストロムに救われる。拳を交えながらも彼らは友情を育み、カーリドはレストランの従業員に雇われたばかりか、寝床や身分証までもヴィクストロムに与えられた。商売繁盛を狙って手を出した寿司屋事業には失敗するものの、いつしか先輩従業員たちまでもカーリドと深い絆で結ばれていく。そんなある日、カーリドは難民仲間からミリアムの居場所を知らされる。ヴィクストロムらの協力で彼は妹と再会、目的を果たすに至る。だが、安心しきった彼をいつかのネオナチの一員が襲う―。

『希望のかなた』3.jpg フィンランドのアキ・カウリスマキ監督・脚本による2017年の映画で、カンヌ国際映画祭でプレミア上映された前作の「ル・アーヴルの靴みがき」('11年)から続く「難民3部作」の第2作。元々は「港町3部作」という構想だったのが、欧州で難民問題が深刻化する中、そちらに重きを置くように路線変更したようです。さらにカウリスマキ監督は、この作品を最後に映画監督業自体からの引退を仄めかしています。(●2023年、監督引退を事実上撤回し、復帰作「枯れ葉」('23年)が第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員賞を受賞した。)

 この作品は、第67回ベルリン国際映画祭で「銀熊賞(監督賞)」を受賞しています。同監督作としては、カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した「過去のない男」('02年)以来、久しぶりの世界三大映画祭の主要部門の受賞であり、この監督、意外と賞の方は獲っていないのだなあと思いました。

 難民問題と格差社会を描き続けているベルギーのジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督は、カンヌ国際映画祭で5作品連続で主要賞を受賞していますが、ベルリン国際映画祭の"傾向と対策"も、難問問題や格差社会になりつつあるのでしょうか。近年、政策上難民を受け入れてきたドイツで難民受け入れ反対の声が上がるばかりでなく、デンマークをはじめ北欧内でも難民問題を巡って受け入れ反対運動を起きていて、我々が知る以上に、欧州では難民問題がクローズアップされているのかもしれません。

「希望のかなた」4.jpg 映画は、「ル・アーヴルの靴みがき」と似た流れで、主人公が偶然出くわした一人の難民を庇護するというものです。レストラン経営のヴィクストロムは偶然にシリア難民の青年カーリドと出くわし、最初は互いに殴り合いの喧嘩をするものの、結局は彼を受け入れることで、彼を強制送還しようとする側、彼を暴力で排除しようとする側と対峙することになります。

 「ル・アーヴルの靴みがき」では、靴みがきの主人公がアフリカ難民の少年を北仏から母親がいるロンドンに密航させようと骨を折りますが、この「希望のかなた」では、このシリア難民のカーリドはシリア脱出の際にハンガリーで生き別れた妹を探しており、自身も難民申請するも不受理となり、強制送還前日に収容施設から逃亡します(結果的に妹とは会えて、彼女の難民申請も図ることに)。

「希望のかなた」 犬.jpg ネタバレになりますが、最後はヴィクストロムは妻とのよりを戻し(カーリドを庇護することが彼の人格に変化をもたらした?)、一方のカーリドは、ネオナチに刺されながらも、妹を難民センターに送り出した後、浜辺で朝日を受けて横たわり、寄り添ってきた犬のコイスティネンに微かに微笑む(そう言えば「ル・アーヴルの靴みがき」でも犬は難民の少年の味方だった)―というエンディングでした。

 カーリドが刺されて(おそらく)血をどくどく流しながら横たわっているところで映画はぷつっと終わり、すべてがハッピーエンドだった「ル・アーヴルの靴みがき」とはこの点が大きな違いです。「ル・アーヴルの靴みがき」がある種"メルヘン"だとすれば、こちらは"現実"ということなのでしょうか。

 ただ、個人的には、「希望のかなた」というタイトルに影響されたのかもしれませんが、カーリドは死ななかったのではないかという気がします。

「希望のかなたIncP.jpg この映画は随所にユーモアが見られます。例えば、ヴィクストロムがレストランを改装して日本風にした寿司屋は、欧米人にありがちな勘違い的日本趣味に溢れていて、法被を着た従業員たちもどこか変です。日本人がしばしば外国映画に見い出す"おかしな日本観"を、カウリスマキ監督は意図的に具象化してみせ、ユーモアを醸しているように思えます(日本人にはよくわかるユーモアだが、外国人にどこまでわかるか?)。

 そうしたユーモアと、バッドエンドの結末は相性が悪いように思えます。したがって、独断ですが(笑)「カーリドは死ななかった」とみるのがスジではないか思います。

 それにしても、やっぱりシリア内戦によって大量の難民が欧州になだれ込んだことで、欧州も今まで以上に難民の問題と向き合わなければならなくなっているのでしょう。

 国連の「持続可能開発ソリューションネットワーク」が発表している「世界幸福度ランキング」で2018年版から2021年版まで4年連続で1位を獲得したフィンランドにさえも、やっぱりネオナチみたいなゴロツキはいるというのは、この問題と無関係ではないのでしょう。

ヴァルプ(犬のコイスティネン)
「希望のかなた」 犬2.jpg「希望のかなた」es.jpg「希望のかなた」●原題:TOIVON TUOLLA PUOLEN●制作年:2017年●制作国:フィンランド・ドイツ●監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ●撮影:ティモ・サルミネン●時間:98分●出演:シェルワン・ハジ/サカリ・クオスマネン/シーモン・フセイン・アル=バズーン/カイヤ・パカリネン/ニロズ・ハジ/イルッカ・コイヴラ/ヤンネ・フーティアイネン/ヌップ・コイヴ/カティ・オウティネン(ゲスト出演)/マリア・ヤンヴェカティ・オウティネン「希望のかなた」.jpgンヘルミ/ミルカ・アフロス/スレヴィ・ペルトラ/マッティ・オンニスマー/ハンヌ=ペッカ・ビョルクマン/タネリ・マケラ/ヴィッレ・ヴィルタネン/トンミ・コルペラ/ヴァルプ(犬のコイスティネン)●日本公開:2017/12●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-12-17)(評価:★★★★)

カティ・オウティネン(洋品店の女店主役でゲスト出演)

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「難民3部作」第1作。こんな結末でいいのかなと思ったりもするが、この監督の場合あまり気にならないのが不思議。
ルアーヴルの靴磨き 2011.jpg ルアーヴルの靴磨き es3.jpg ルアーヴルの靴磨き 03.jpg
ル・アーヴルの靴みがき [DVD]
アンドレ・ウィルム/カティ・オウティネン
「ルアーヴルの靴磨き」01.jpg 北フランスの大西洋に臨む港町ル・アーヴル。ここに暮らすマルセル・マルクス(アンドレ・ウィルム)は、かつてパリでボヘミアン生活を送っていたが、今はル・アーヴルの駅前での靴磨きを生業としている。ベトナム移民のチャング(クォック=デュン・グエン)と共に日々靴磨きに精を出し、夕暮れともなると微々たる儲けながら代金を持ち帰り、献身的な妻・妻のアルレッティ(カティ・オウティネン)に迎えてもらうのを楽しみにしていた。ずっと苦労をかけてきた妻は、マルセルアーヴルの靴磨きges.jpgルにしてみれば勿体ないくらいの女房と感じられてならなかった。そんなある日、アルレッティは病に倒れ、医師から治る見込みはない、余命も長くないと宣告されるが、彼女はマルセルには絶対にこのことは言わないで欲しいと医師に頼む。一方、港にアフリカのガボンからの不法移民が乗った船が漂着し、密航者らのコンテ「ルアーヴルの靴磨き」02.jpgナから逃げ出し、警察の検挙をすり抜けた一人の少年イドリッサ(ブロンダン・ミゲル)にマルセルは偶然出くわす。警視のモネ(ジャン=ピエール・ダルッサン)はマルセルを尋問し、不審者を見なかったかと訊ねるが、少年を見捨てられないと考えたマルセルは、街の一同と共に少年を庇う。ところが隣の住人(ジャン=ピエールルアーヴルの靴磨き3.jpg・レオ)が、黒人の少年が出入りするのを目撃し、警察に通報してしまう。モネ警視はマルセルに付きまとい馬鹿な真似はするなと忠告する。マルセルは収監されたイドリッサの祖父に会いに行き、ロンドンにイドリッサの母親がいて、自分は捕まってしまったが、イドリッサをロンドンに行かせてほしいと頼まれる。マルセルは密航に必要ま300ユーロを集めるため、人気ロックスターのリトル・ボブ(ロベルト・ピアッツァ)にチャリティコンサートを依頼する。資金が集まって、いよいよ密航の日、イドリッサを港まで運び船に乗せることがたが、そこに警視モネがやって来る―。

 フィンランドのアキ・カウリスマキ監督・脚本による2011年の映画で、フランスの港町のル・アーヴルを舞台にした作品で、同監督の「難民3部作」の第1作(原題:ルアーヴル)。タイトルにも表されているように、元々は「港町3部作」という構想だったのが、欧州で難民問題が深刻化する中、そちらに重きを置くようになり、シリーズ第2作「希望のかなた」('17年)以降、「難民3部作」に路線変更したようです。第64回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映され、FIPRESCI賞を獲得しています。

 移民問題というやや重のテーマを扱いながら、どことなくユーモアも漂い(資料によってはコメディ映画として紹介されていたりする)、映画に出てくる人々も皆、質素ながらも互いに支え合って生きていて、日本映画でよく描かれる下町の人情のようなものに通じるところがあります。

 マルセルの妻が倒れるとご近所さんは奥さん手を差し伸べるし、イドリッサが捜査対象になっていることを新聞で知ると皆で庇います。カフェの女主人や常連客、靴みがき仲間までもがマルセルに協力するのがいいです。マルセル自身も、イドリッサを母の元に届けるために奮闘し、最後はイドリッサを追う警視モネまでも、実は人情味ある人間だったとは! 

 加えて、アルレッティにも奇跡が起きるとなると、こんなハッピーな結末にしてしまっていいのかなと思ったりもしますが、この監督の場合、この作り方があまり気にならない、不思議な作品です。多分、作為的に盛り上げるような作り方をしていないため、かえって受け入れやすいのではないかと思います。

ルアーヴルの靴みがき 01.jpg アンドレ・ウィルムが演じた主人公のマルセル・マルクスという名前は、カール・マルクスにインスパイアされたそうで、また、 ジャン=ピエール・ダルッサンが演じたモネ警視は、ドストエフスキーの『罪と罰』に登場する、ラスコーリニコフを疑い心理面から追い詰める捜査官ポルフィーリー・ペトローヴィチにインスパイアされているそうです。

「ルアーヴルの靴磨き」con.png マルセルの頼みでチャリティ・コンサートをやってくれる人気ロックスターのリトル・ボブ(ロベルト・ピアッツァ)は実在のロックンローラーで、つまり本人役で出ているわけです。カウリスマキ監督は、「ロケ地を探していたとき、リトル・ボブの存在がル・アーヴルを舞台に選んだ理由のひとつだった」と言い、「ル・アーブルはフランスのメンフィス、リトル・ボブはさながらそこのエルヴィス・プレスリー」と、その歌声を絶賛しています。

LE HAVRE Jean-Pierre Léaud.jpgJean-Pierre Léaud.jpg ジャン=ピエール・レオは、トリフォーやゴダールの映画によく出ていたヌーヴェルヴァーグ映画の代表的俳優ですが、まさかこんな密告者役で出ているとは思いませんでした(この密告者の男だけが映画の中で"嫌な奴"なのだが)。2016年には第69回カンヌ国際映画祭においてパルム・ドール・ドヌール(名誉パルム・ドール)を受賞していますが、過去の同賞の受賞者は以下の通り錚々たる顔ぶれになります。

パルム・ドール・ドヌール受賞者(※印は俳優としての受賞)
  1997年  イングマール・ベルイマン(スウェーデン)
  2002年  ウディ・アレン(米)
  2003年  ジャンヌ・モロー(仏)※
  2005年  カトリーヌ・ドヌーヴ(仏)※
  2007年  ジェーン・フォンダ(米)※
  2008年  マノエル・ド・オリヴェイラ(ポルトガル)
  2009年  クリント・イーストウッド(米)
  2011年  ベルナルド・ベルトルッチ(伊)
       ジャン=ポール・ベルモンド(仏)※
  2015年  アニエス・ヴァルダ(仏)
  2016年  ジャン=ピエール・レオ(仏)※
  2017年  ジェフリー・カッツェンバーグ(米)
  2019年  アラン・ドロン(仏)※

 また、この映画に出たカウリスマキ監督の愛犬"ライカ"は、2001年から始まったカンヌ国際映画祭で優秀な演技を披露した犬に贈られる賞「パルム・ドッグ賞」の「審査員特別賞」を受賞しています。

ライカ(犬)
ルアーヴルの靴磨き 0.jpgルアーヴルの靴磨き8.jpg「ルアーヴルの「ルアーヴルの靴みがき」11.jpg靴みがき」●原題:LE HAVRE●制作年:2011年●制作国:フィンランド・フランス・ドイツ●監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ●撮影:ティモ・サルミネン●時間:93分●出演:アンドレ・ウィルム/カティ・オウティネン/ジャン=ピエール・ダルッサン/ブロンダン・ミゲル/エリナ・サロ/イヴリーヌ・ディディ/クォック=デュン・グエン/フランソワ・モニエ/ロベルト・ピアッツァ/ピエール・エテックス/ジャン=ピエール・レオ/ライカ(犬)●日本公開:2012/04●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-12-04)(評価:★★★★)
   
ピエール・エテックス(ベッカー医師)...「恋する男」(1962)「ヨーヨー」(1964)「大恋愛」(1968)
カティ・オウティネン(アルレッティ)...「過去のない男」(2002)「街のあかり」(2006)「希望のかなた」(2017)


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